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クラスター株式会社のソフトウェアエンジニアです。エンジニアリングや読書などについて書いています。

「強いチームはオフィスを捨てる」を読んだ


最近リモートワークへの知識に興味が湧いてきたので、ひとまず強いチームはオフィスを捨てるを読んだ。元々はリモートワークについての思い込みがあり、そのためリモートワークの難しさのほうに目が行き過ぎていたのだけれど、この本を読んでみて少し中立よりになれたように思う。そういう面で今の時期に読むには非常に良かった。リモートワークの知識だけというより、普通に働いていても参考になる知識も得られた。

リモートワークを始めたいけど何から始めたらいいかについて分からない人には最適な本。ただし良い本であるという一方で、少しリモートワーク礼賛の傾向があるので、そこは一歩引いて読むと良いのかなと思う。とはいえ、ただ褒めているというだけでなくて、きちんとメリットデメリットの説明や落とし穴の説明もされているので、まあそんなに心配はないかなというイメージ。

いつもどおり印象に残った部分をまとめていく。

働き過ぎることを心配

この本の中で印象的だったのは、リモートワークをする際には社員が本当に働くのだろうかを心配するより、働き過ぎないだろうかを心配したほうがいいと書いてあって、非常に興味深かった。おそらく37シグナルズでリモートワークをしていると、何回もこのような状況になって、社員の健康面などで問題が起きたのではないかと思われるし、説得力がある。

確かにリモートワークで行うと、仕事とプライベートの境目がぼんやりするため、やる気がある仕事が割り当てられると、ひたすら仕事に打ち込んでしまいそうな気がする。

37シグナルズでは推奨勤務時間が週に40時間で、それ以上働いても特に褒められない雰囲気にしているっぽい。この章以外にも仕事用のPCとプライベート用のiPadとかで分けたほうがいいとか、仕事とプライベートをうまく切り分けるコツみたいなのがいろいろ書いてあって、なるほどと思った。

島流しにならないために

リモートワークが失敗する典型的なパターンの一例として、一人だけリモートワークさせてみたら数カ月後その人とうまくコミュニケーションが取れず失敗し、リモートワークはだめだという雰囲気になると書いてあった。

リモートワーク確かにまずは一人でとやると失敗しそう。自分自身もSkypeやビデオ会議で一人だけリモートにいる会議に何度も参加したことがあるけど、大体会議の主催をしている側、もしくは人数が多い側が会議の主導権を握ってしまい、もう一方は意見を言いづらいという状況が出来上がる。他にも、この前ハングアウトで会議してみたけど、一人だけハングアウトはうまく行かなくて、全員がハングアウトにしたら少しうまくいったって話を聞いたので、納得感がある。

もしリモートワークを小さく導入するなら、まずはオフィスにいるんだけどリモートにするとか、週に一日だけみんなでリモートにするとか、そういう工夫が必要そう。「小さく」を「人数を少なく」という方向で考えないようにしたい。小さく導入するという話は昔開発フローに新しい仕組みを導入するとき気をつけていること - $shibayu36->blog;というエントリで書いてみたことがあるので参考にどうぞ。

採用にはクイズではなくリアルな質問

なぞなぞで仕事の質は測れない、という章があった。[asin:4791760468:title]という本が話題になり、謎かけで採用を決めるというブームが昔あったが、そんなことは絶対にないという話が書いてあった。その代わり37シグナルズでは、例えばカスタマーサポートの採用をしたいときは、日々のサポートにやってくる質問のいくつかをピックアップしてメールで送り、メールの返信でそれに対して答えてもらうようだった。他にも一旦2週間とかで契約し、一つプロジェクトを任せてから合否を決めるということを試しているということも書いてあった。

この話はおもしろいと思う。実際に仕事のシミュレーションをするという面で、ただの面接などと比べるとその人の能力をうまく判定できそう。その一方で採用を受ける側のコストが非常に高くなるという面もありそうだが、その辺をどう折り合いをつけているのか少し気になった。

推測としては、リモートワークをうまく行う前提として採用がきちんと出来ているという前提が必要なので、そこは会社側もコストを支払うし、コストを支払ってでも来てくれる人を採用するようにしているのではないかと思う。

この話はリモートという話とは関係なく参考になる話なので、もう少し考えてみたい。

まとめ

トピックごとで参考になる話が多かったので読んでみて正解だった。リモートワーク入門してみるにはこの本を読んでみると良さそう。

この本を読んでみると、リモートワークをする上で暗黙に行われている前提条件がありそうに見えたのが興味深かった。僕の考えた中では、少なくとも「採用がうまく動いていて、会社に合う優秀な人が雇われている」、「リモートワークをする人の文章力が最低限ある」くらいの前提条件がありそうと思ったがよく分からなかった。もし実際にリモートワークをしているところで、この辺に関して知見がある人がいたら教えて欲しいです。

また、新人が入ってきた時の教育をリモートで出来るのかという疑問がわいた。実際に教育が必要な人を雇わないのか、そういう人が入ってきたら最初はオフィスでやるのか、どういう手段を取っているか気になる。

いろいろ興味がわいたので、他にリモートワークに関する本があったら読んでみたい。いまいち見つからなかったので、こういう本を読んでみればというおすすめがあれば教えてください。